3.低価格戦略
低価格戦略は、商品やサービスを低価格帯で販売する戦略で、価格優位性を追求します。
3-1低価格戦略における項目をいくつか説明します。
- コスト管理
低価格帯であるため、コスト管理が重要となります。生産コストを下げる、人件費を削減する、販売チャネルを最適化するなど、様々な取り組みが必要です。 - 品質
低価格帯であっても、商品やサービスの品質は犠牲にするわけにはいきません。安い価格でありながら品質が良い、または優れた機能性を備えた商品やサービスを提供することで、顧客の信頼を得ることが重要です。 - 付加価値
低価格帯であっても、顧客に付加価値を提供することが求められます。例えば、製品に保証期間を設ける、サービスに割引を付与するなど、価格だけでなく、顧客が求める付加価値を提供することが大切です。 - マーケティング
低価格帯の商品やサービスは、広告やマーケティングを通じて、顧客にアピールする必要があります。ターゲット層の選定や販売促進活動など、効果的なマーケティング戦略を立てることが重要です。 - 競争力
低価格帯の商品やサービスは、他社との競争が激しくなります。競合分析や差別化戦略など、競争力を維持するための取り組みが必要です。
以上が、低価格戦略における項目の一例です。低価格戦略を選択する際には、商品やサービスの特徴、顧客ニーズ、競合状況などを考慮した上で、適切な価格設定と戦略を策定することが重要です。
3-2低価格戦力のメリット・デメリット
【メリット】
- 価格競争力
低価格帯の商品やサービスは、競合他社との価格競争力が高くなります。顧客は同等品質の商品やサービスを、より低い価格で提供している企業を選択する傾向があるため、需要が見込めます。 - 新規顧客獲得
価格を重視する顧客層にアピールすることができ、新規顧客を獲得することができます。 - 生産コストの削減
開発や生産コストを削減することができるため、低価格帯でも利益を確保することができます。 - ブランド認知度の向上
低価格帯の商品やサービスは、多くの人々が手軽に試すことができるため、ブランド認知度を高めることができます。
【デメリット】
- 利益率の低下:価格を下げることで、利益率が低下する場合があります。特に、生産コストを削減することで、品質が低下する場合があるため、利益率を上げることが難しくなる場合があります。
- 顧客層の偏り:価格を重視する顧客層にアピールするため、商品やサービスに求める品質や機能が低いという傾向があります。そのため、高品質や高機能を求める顧客から見放される可能性があります。
- 長期的な競争力の低下:価格競争に参加することで、商品やサービスの品質や機能の向上が難しくなる場合があります。また、競合他社が同じ価格帯で同様の商品やサービスを提供した場合、差別化が困難になるため、長期的な競争力の低下を招く可能性があります。
- 財務面の不安定性:低価格帯で提供するため、需要が拡大しなければ、売上が伸びず、経営が不安定になる場合があります。また、需要が拡大した場合でも、適切な在庫管理や生産管理を行わないと、過剰在庫や生産過剰によるコスト増加が発生し、財務面の不安定性を招く可能性があります。
- ブランド価値の低下:低価格帯の商品やサービスは、ブランド価値が低下する可能性があります。特に、消費者にとっては価格が低い=品質が低いというイメージを持つ場合があるため、ブランド価値の低下を招く可能性があります。
- 将来的な価格上昇の難しさ:低価格帯で提供している場合、将来的に価格を上げることが難しくなる場合があります。消費者にとっては価格が低いことが魅力であるため、価格を上げることができない場合があります。
低価格戦略は、商品やサービスの価格を下げることで、価格を重視する顧客層にアピールすることができます。しかし、利益率の低下や財務面の不安定性などのデメリットもあるため、適切な戦略の立案や実行が必要です。
4-1高価格戦力の事例
- アップル社
アップル社は、高品質かつ高価格の製品を提供することで、成功を収めています。特に、iPhoneやMacなどの製品は高価格帯に位置していますが、デザインや機能性などの高い付加価値を提供することで、顧客からの支持を得ています。 - ルイ・ヴィトン
ルイ・ヴィトンは、高級ブランドとして知られており、高品質な製品と独自のブランドイメージを持っています。ブランドイメージの維持に努め、高価格帯での販売を続けています。 - フェラーリ
フェラーリは、高級スポーツカーの製造で知られています。高品質で高性能な製品を提供し、限定生産やカスタマイズによって独自性を追求することで、高いブランド価値を維持しています。
一方、高価格戦略の失敗事例としては、例えば、高級腕時計メーカーの「Zenith」があります。市場の変化に適応せず、需要が低迷したため、製品のラインナップを大幅に見直すなどのリストラ策を余儀なくされました。価格の高さがマイナスに働いたという見方があります。
4-2中価格戦力の事例
- ユニクロ
ユニクロは、ファッションブランドとして中価格帯で展開しています。高品質で機能性の高い製品を提供することで、世界的に高い評価を得ています。また、デザイン性にも注力し、トレンドにも敏感に反応していることも人気の秘密の一つです。 - スターバックス
スターバックスは、コーヒーチェーン店として中価格帯で展開しています。高品質のコーヒーを提供すると同時に、店舗内での過ごし方や居心地の良さにもこだわりを持っています。また、地域に合わせたオリジナル商品の提供など、顧客ニーズに合わせた戦略も成功の一因です。 - タイムズカーレンタル
タイムズカーレンタルは、カーシェアリングサービスとして中価格帯で展開しています。利用しやすい価格設定と、利用時間やエリアの選択肢が多いことが人気の秘密です。
一方、中価格戦略の失敗事例としては、例えば、かつての日本の家電メーカー「シャープ」があります。価格帯の中心から外れ、高価格帯にシフトしたことが失敗の一因とされています。市場の変化に対応せず、需要が低迷したため、販売不振に陥り、経営難に陥ったとされています。
4-3低価格戦力の事例
- ダイソー:ダイソーは、100円ショップとして低価格帯で展開しています。幅広い品揃えと低価格で、多くの人々から支持されています。また、商品の品質も高く、独自の開発体制によって新商品の開発も積極的に行っています。
- ユーユー化粧品:ユーユー化粧品は、化粧品販売店として低価格帯で展開しています。ネット販売にも力を入れ、販売価格を抑えることで、多くの顧客から支持されています。また、独自のブランドを展開することで、差別化を図っています。
- ムジ:ムジは、ファストファッションブランドとして低価格帯で展開しています。迅速な商品入荷や、トレンドに合わせた商品展開など、顧客ニーズに合わせた戦略を展開することで、多くの人々から支持されています。
一方、低価格戦略の失敗事例としては、例えば、かつての日本のエレクトロニクスメーカー「アイワ」があります。価格競争力を追求するあまり、製品の品質低下や商品開発力の低下が進み、消費者からの信頼を失ってしまったため、経営破綻してしまいました。
5.まとめ
コロナ禍による経済的な影響により、多くの企業が価格戦略の見直しを迫られています。コスト削減の必要性から、低価格戦略の採用が増えていますが、需要の減少により価格競争が激しくなり、利益率が低下する可能性があります。一方で、中価格帯の需要が増えていることから、中価格戦略を採用する企業も増加しています。
また、高級品の需要も減少している中、高価格帯でも付加価値の高い商品やサービスを提供することで差別化を図る企業が出てきています。コロナ後の経済回復が予測される中、競争力を維持するために適切な価格戦略を選択し、戦略的な価格設定を行うことが重要となります。